基礎知識(DTP関係)

フォントは「Open Type形式」を用いること、画像の解像度は300ppiを確保し、断ち落としに注意するということである。

フォントの基礎

フォントには様々なデータ形式のものが入り乱れて居り、このことからトラブルの原因にもなりやすい。

フォントの形式

フォントを表示方法の観点に立って分類すると、「ビットマップフォント」、「アウトラインフォント」の二つがある。ビットマップフォントとは文字の形をドットで表したものである。このフォントは拡大すれば荒く見える。一方、アウトラインフォントは字形を数式として記録し、解像度に応じてラスタライズする。このため、自由自在に拡大・縮小が可能である。

DTPではアウトラインフォントを使用するが、今日々ほとんどのフォントは「アウトラインフォント」であるから、この辺りは心配しなくとも良い。

このアウトラインフォントをデータ形式で分類してみよう。我々の様な一般ユーザが使用する限りでは、TrueTypeフォント(TTF)、PostScriptフォント(PSフォント)、そして、二つの特徴を併せ持ったOpenTypeフォント(OTF)の三種類を見かける。現在手に入るほとんどのフォントはOTFである。

拡張子

しかしながら、拡張子について見てみると、「.ttf」、「.ttc」などTrue Type Fontの拡張子を持つものを見かけるから、TTFはたくさんあるではないかとの疑問を持たれるかもしれない。OTFと言っても、実際の字形データはPS形式かTTF形式のどちらかで記述されて居る。TTF形式を基本としたフォントの拡張子は従来通り「.ttf」か「.ttc」とされ、PS形式をベースとしたものの拡張子は「.otf」とされることが多いといった理由による。即ち、拡張子のうえではTTFであるが実際にはOTFである。

プロポーショナルと等幅

和字の最大の特徴は仮想ボディという正方形の升目に一つひとつの文字が収まる。幅は常に全角固定であり、固定幅または等幅と言う。

一方、欧字は「半角文字」もしくは「1バイト文字」と呼ぶことがある。半角は全角の半分であるが、欧字は半角の幅を常に持つというわけではない。欧字を構成するアルファベットは文字毎に固有の幅を持ち、これをプロポーショナルと呼ぶ。

組版の考えに立つならば、フォントは和文が等幅で、欧文がプロポーショナルであるフォントを選ぶ。実際のところ、フォントによっては欧文・和文ともに等幅、欧文はプロポーショナルで和文は固定幅、ともにプロポーショナルというものがある(タイプ3と称す)。

次に示したる表の様に、フォント名から当該フォントがどのタイプに属するかは各書体メーカーごとに異なっているのが現状である。また、PS形式のOpen Type Fontのほとんどはタイプ2である。ただし、DTPソフトウェアとOTFのOpen Type機能とを用いれば、タイプ3の様に振る舞わすことも可能である。

等幅とプロポーショナルによるフォントの分類
タイプ1タイプ2タイプ3
MS ゴシック MS P ゴシック
DF 平成明朝体DFP 平成明朝体DFG 平成明朝体
HG 明朝HGS 明朝HGP 明朝
モトヤ明朝等幅モトヤ明朝モトヤ明朝KP
ヒラギノ明朝体等幅ヒラギノ明朝
 PS形式のOpen Type Fontのほとんど 

フォントの共有

ドキュメントを開かんとしたときに、閲覧環境にないフォントが文書に含まれて居れば、そのフォントが使用された箇所は正常に表示されないか、別のフォントに置換される。このため環境が異なっても、フォントを共有する必要がある。

この問題を解決するためにアウトライン化と埋め込みの二つの方法がある。

アウトライン化とは文字データを画像データに変換することである。フォントデータを画像データに変換してしまえば、先の様な問題は生じない。入稿する印刷所が未対応のフォントを用ゆる場合は、フォントをアウトライン化してしまえば確実である。ただし、テキストデータとして編集ができなくなるし、場合によってはレイアウトの崩れが生ずる。また、本文文字といったフォントサイズの小さな箇所にアウトライン化を施して出力解像度の低い機器で出力すると、文字が太る問題がある。

埋め込みとは、ここではPDFファイルにフォントを埋め込む(エンヘッド)ことを指す。DTPソフトウェアや多くのワープロソフトはPDF出力時にフォントを埋め込む仕様になって居る。細かい技術的なことは省略するが、PDFファイルにフォントが埋め込まれて居れば、閲覧環境にないものが含まれていたとしても、正常に表示される。ただし、一部のフォントベンダーが販売しているフォントは埋め込みができない様に電子的に保護されて居る場合もある。

ただし、OTFのPDFへの埋め込みは正常な埋め込みができないことがある。掲げた図はOTFフォントたる小塚明朝Proが含まれる文章を、Word 2010で作成してPDF出力したものである。御覧の通り、拡大すると荒い。即ち、画像化されてしまって居る。InDesignやEDICOLORの様な高級なるDTPソフトウェアではこの様な問題は起きることはないが、Word 2010の様なソフトウェアではPS形式のOTFの埋め込みに未対応の様である。よって、Word 2010を使用する場合はPS形式のOTFの使用は敬遠した方が良い。

図版の基礎

画像ファイルの形式については色々な分類があり混乱を招くものであるが、ビットマップ(ラスター)形式とベクトル形式に分けられる。

色の表現

DTPにおける色の表現、所謂カラーモードにはRGB、CMYBk、モノクロ2階調、グレースケールなどがある。カラー印刷であればCMYBkを、モノクロ印刷であればモノクロ2階調もしくはグレースケールを用ゆる。

RGB

光の三原色であるレッド、グリーン、ブルーで三種の光で色を表現する。通常は各々の色の階調を8ビット、つまり256階調で記録する。これを24ビットカラー、またはトゥルーカラーと呼ぶ。

CMYBk

色の三原色であるシアンとマゼンタとイエローとの三色にスミを加えた四種のインキを用いて色を表現する。通常は各々の色を256階調で表現する。

グレースケール

白から黒までを何段階かの濃淡に分けて離散的に表現する方式である。この変化を階調と呼ぶ。通常はこの濃淡を8ビットの256階調であるが、16ビット(6万5536)の場合もある。印刷用途では8ビットが用いられる。階調が16ビットのデータの図版を入稿しても、正常に出力できないのでDTPでは用いてはいけない。

モノクロ2階調

白か黒だけの2階調(1ビット)で表現する。単にモノクロと称する場合もある。

ビットマップ画像

ビットマップ形式では画像をピクセル(細かいドット)で表現したものであり。写真などで使用されるが、拡大するとジャギー(階段状のギザギザ)が出る。このジャギーはどれほど高解像度な画像であっても絶対に出ることに注意されたい。ビットマップ形式の画像ファイル形式は代表的なものとしてJPEG、PNG、GIF、PSD、TIFFなどがある。このうちCMYBkデータを扱える画像はPSDとTIFFであるので、DTPではPSDかTIFFのどちらかを標準的に使用する。

解像度

ビットマップ画像では解像度を考慮する必要がある。解像度は1インチあたりに画素がどくくらい存在するかの尺度である。解像度には画像データそのものが持つ解像度と入出力機器が持つ解像度との二つがある。前者を画像解像度(ppi、pixel per inch)と称し、後者を入出力解像度(dpi、dots per inch)と呼ぶ。dpiはプリンタに限れば出力解像度と称する。

DTPにおいては高い解像度の画像が要求せられ、一般的にはカラー・グレースケール画像は300~350[ppi]、モノクロ画像は最低でも600[ppi]である。ウェブなどスクリーンに表示される画像の解像度は72か96ppiで充分であることから、DTPにおける要求解像度は高いことがよくわかる。

どれくらいの解像度の画像を実際に用意すべきかは事前に印刷所に問い合わせる。また、印刷所によってはグレースケール画像でもモノクロ並の画像解像度を求めることがあるので、グレースケール画像はモノクロ画像と同じ扱いでも構わないであろう。ただし、不必要に高い解像度の画像を用意しても、印刷に違いは出ないので意味がない。むしろ、巨大なデータサイズのため印刷時の処理が重くなるだけである。

ベクトル画像

ベクトル形式は線を数式で表現したもので、ビットマップ画像と比較しても拡大・縮小をしても画像はきれいなままである。その性質上、線画やロゴなどの描写に向いている。ベクトル形式の画像ファイルとしてはEPS(ビットマップ形式の混在も可)、AI(アドビ社のIllustratorのネイティブファイル)などがある。

モアレ

モアレは干渉縞とも呼ばれ、周期的な模様を重ね合わせたときに見える縞模様のことである。モアレは主に画像処理の際と印刷の際とで起きうる。印刷時におけるモアレについては印刷所の範疇なので、本節では前者の画像処理の際のモアレを述べる。

画像処理時にモアレが起きる原因としては、不適切な画像の縮小や、解像度を下げることの二つがあげられる。解像度を下げる行為(ダウンサンプリング)は画素を間引く行為でもある。この間引き処理が適切になされないとモアレが発生することがある(何故、それが生ずるのかは専門書に委ねるとして)。通常フォトレタッチツールでは補間処理(モアレが生じないようにダウンサンプリングすること)されるから、そのツール上での画像処理で、それが生ずる心配はないだろう。ただ、DTPソフトウェア上でも画像の縮小・拡大ができる。このとき、画像解像度は元の値と変わってしまうが、DTPソフトウェアには縮小・変形時に補間処理はされないので、そのときにモアレが生ずる可能性がある。

モアレの防止

モアレを確実に防止するためには、画像は原寸大で作成して、全く変形や縮小をせずにDTPソフトウェア上で処理する。

画像の縮小や変形をするにしても、フォトレタッチツールで行ってそれらの処理時に補間処理を用ゆる。また、DTPソフトウェア上では画像の縮小などをしないように努め、トリミングまでに留める。どうしても縮小や変形をするのであれば、整数分の一以外に縮小しない様にする。そうすれば、モアレは比較的起きにくいとされている。

モアレが起きにくい画像

縮小時にモアレが生じやすい画像と生じにくい画像とがある。単なる風景写真などはモアレが起きにくい。その一方、規則的な模様が含まれたる画像、例えば、レンガの壁面や洋服などではモアレが起きやすい。この様な画像の性質を見て、画像処理を実施しよう。

裁ち落とし

原稿は紙にぴったりと印刷されるわけではなく、いくらかの誤差が生ずる。その後の裁断という工程でもやはりいくらかの誤差が出る。もし、原稿が仕上がりサイズ通りの寸法であったら、ずれたために余白が生じる。

この余白を出ないようにするのが裁ち落としである。通常は天地左右に3ミリメートルづつの塗り足しを設ける。仕上がりサイズ一杯でなくとも、図版が仕上がり線にかかるものであったら、塗り足しは必要になる。

また、裁ち落とし線ぎりぎりにある文字も裁ち落とされる可能性がある(文字欠け)ので、裁ち落とし線から3ミリメートルから内側に文字を置かなければならない。さらに余裕を保たせるのであれば、5ミリメートルは内側に置くべきである。